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各研究開発課題チームより論文を発表

2025年に発表した論文を、要旨と新規性・特徴を踏まえて一覧にしております。

1.Traditional Gender Role Attitudes and Job-Hunting in Relation to Well-Being: A Cross-Sectional Study of Japanese Women in Emerging Adulthood

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◆論文の要旨

日本の大学生・若手社会人女性132名を対象に、就職活動経験・性別役割態度とウェルビーイングの関連を調査。就職活動経験はウェルビーイングと負の関連を示し、伝統的性別役割態度が強いほどその影響が増大。性別役割態度単独では有意な関連はなかった。

◆新規性・特徴

女性の就職活動が必ずしも幸福感向上につながらず、性別役割意識が影響を修飾する点を実証。従来研究で未解明だった観点を提示した。



2.Expressions of “Ikizurasa” in Posts on X (Formerly Twitter) in Japan in 2023: Descriptive Analysis

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◆論文の要旨

日本ではコロナ初期に自殺が減少したが後に増加し、特に女性や40歳未満で顕著であった。自殺関連要因として注目される「生きづらさ」は孤独や絶望感を伴うが、定量研究は乏しく、本研究では若者利用率の高いX上で生きづらさの表出頻度とピーク時期を分析した。その結果2023年130万件超の投稿を確認し、4月末と7月中旬に投稿が急増していた。

◆新規性・特徴

生きづらさ概念をSNS上の言語表現から定量的に捉えた初の試みであり、日本の若者の精神的困難を把握する新たな方法論的視点を提示した。

3.Insights From the Nihon Housou Kyoukai’s Virtual Reality–Based Social Interaction Television Program “Project Aliens” for Adolescents With Psychiatric Disorders: Single-Center Case Series Study

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◆論文の要旨

本研究は、精神疾患を抱える思春期の若者3名が参加したソーシャルVR番組(NHK プロジェクトエイリアン)の症例系列を報告した。孤独感・レジリエンス・抑うつ症状の改善が見られ、対話分析では自己開示や感情表出が促進された。アバターを介した交流と専門的支援の組み合わせは、若者の心理的成長を支える有効な方法となり得ることが示唆された。

◆新規性・特徴

テレビ番組を通じたソーシャルVR活用の臨床的効果を実証した初報告であり、待機中の精神医療支援を補完する新しい介入モデルを提示した。

4.Challenges in Implementing a Mobile AI Chatbot Intervention for Depression Among Youth on Psychiatric Waiting Lists: Randomized Controlled Study Termination Report

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◆論文の要旨

本研究は精神科受診待機中の12~18歳を対象に、ACTを組み込んだAIチャットボット「emol」の有効性を検討したランダム化比較試験である。96名中8名が関心を示したが、最終的に全員が離脱し分析不能となった。デジタル介入への不信感や複雑な手続きが低い参加率に影響した可能性が示唆された。

◆新規性・特徴

日本の若年層を対象にAIチャットボット介入の実用性をRCTで検証した初報告であり、参加障壁や導入条件に関する実証的知見を提示した。

5.The Impact of Productivity Loss From Presenteeism and Absenteeism on Mental Health in Japan

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◆論文の要旨

世界的に労働者のメンタルヘルス問題が深刻化しており、日本でも約8割が仕事に不安やストレスを感じている。対策としてストレスチェックや研修が導入されているが、中小企業を中心に実施は不十分である。特に医療費に現れにくいプレゼンティーズムやアブセンティーズムは「隠れたコスト」として大きな経済損失を生み、日本のGDPの1.11%に相当することが明らかになった。

新規性・特徴

診断の有無を問わず労働者全体を対象に、メンタル不調によるプレゼンティーズム・アブセンティーズム損失を推計する点で先駆的であり、政策的示唆を持つ。

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